反ファッショからファッショに転換した公明党

公開日: 更新日:

「公明党」薬師寺克行著(中公新書)

 1975年7月8日の「読売新聞」夕刊に大きく「共産・公明が“歴史的和解”」という記事が載った。「反ファッショで連携」とある。作家の松本清張の仲介で、創価学会共産党は前年の12月28日に共存を謳った「創共協定」を結び、翌日、創価学会会長の池田大作と共産党委員長の宮本顕治が会談して協定を確認したというのである。

 松本によれば予備会談の過程で、創価学会の男子部長だった野崎勲はこう言ったという。

「池田会長は反共ではない。ファシズムが進行すれば学会がそれに狙われる危険がある。さきに会長は、政府がもし共産党を非合法化して弾圧すれば、学会は総力をあげて共産党を支援すると発言した。宮本委員長もこの池田発言を評価すると応えた」

 わずか40年余り前の発言である。政府を自民党と置き換えれば、創価学会=公明党にとって自民党はそれほど遠い政党だった。それがいまや、自民党と一緒になって共産党を攻撃している。

 池田との会談で宮本が、

「公明党は、池田会長の発言を反共寄りに解釈している。公明党は口では反自民を言っているが、実際の路線は自民に同調である」

 と批判すると、池田が、

「現在の公明党執行部は政治の玄人になっている。そのために学会を素人と考え、独善的になっている」

 と応じ、さらに、

「牢に入っていた人間は強い。(学会の)初代牧口会長がそうで、反権力で戦った。その次の戸田城聖会長から右寄りになった。自分がその軌道を左寄りに修正した」

 と強調した。

 しかし、池田が本当にそう考えていたかはわからない。池田が公明党を抑えなかったので、「創共協定」はアッという間に空文化したからである。

 そして、1996年に自民党の機関紙「自由新報」に70回以上にわたって、池田と元信者との紛争に関する記事が掲載され、その3年後に自民党と公明党の連立政権が誕生する。いくら政治情勢は変わるとはいえ、自民党も公明党も、あまりに無軌道、無節操だろう。

 著者は「朝日新聞」に載った川柳から、2007年の「ブレーキを踏むそぶりだけ公明党」と2008年の「ブレーキを踏むそぶりやめ突っ走り」を引いている。反ファッショからファッショへの転換である。

★★半(佐高信)

【連載】週末オススメ本ミシュラン

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕がプロ野球歴代3位「年間147打点」を叩き出した舞台裏…満塁打率6割、走者なしだと.225

  2. 2

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  3. 3

    “玉の輿”大江麻理子アナに嫉妬の嵐「バラエティーに専念を」

  4. 4

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  5. 5

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  1. 6

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 7

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  3. 8

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  4. 9

    大江麻理子アナはテレ東辞めても経済的にはへっちゃら?「夫婦で資産100億円」の超セレブ生活

  5. 10

    裏金のキーマンに「出てくるな」と旧安倍派幹部が“脅し鬼電”…参考人招致ドタキャンに自民内部からも異論噴出