すべての職がロボットに奪われる日
農業の機械化や工場のオートメーション化などにより、人間が機械に奪われた職は数多くある。しかし、労働者は新たな、そしてよりハイレベルな職にシフトし、テクノロジーとの共存を続けてきた。
ところが今、恐ろしいほどのスピードで進化するテクノロジーが、人間からあらゆる職を奪い、共存を不可能なものにしようとしている。マーティン・フォード著、松本剛史訳「ロボットの脅威」(日本経済新聞出版社 2400円+税)では、人間の労働者を駆逐するテクノロジーの最前線をルポしている。
最新テクノロジーは、実用化までに莫大なコストや高度で複雑なプログラミング作業を要することが難点だった。しかし、今ではそれすらなくなりつつある。ボストンに本社を置くリシンク社は、お掃除ロボットのルンバを製造する企業。先ごろ同社が開発した人間型製造用ロボット「バクスター」は、アームを動かすだけで作業を覚え、覚えた作業内容はUSBに保存が可能になっている。そして、別のバクスターにこのUSBを差し込めば、あっという間に作業内容をコピーすることができるのだという。
さらに本書では、最新テクノロジーが製造業だけでなく、高スキル労働者にも取って代わろうとしていることを明らかにしている。ノースウエスタン大学の研究者と学生で立ち上げたベンチャーキャピタルのナラティブ・サイエンス社は、あらゆる情報をもとにニュースを書き上げる人工知能エンジン「クイル」を開発。統計分析を行って注目すべき出来事を見定めるクイルは、単なる事実の羅列にとどまらない、“読ませる”文章の作成ができるという。
スポーツや政治、経済など、分野を問わず30秒ごとに新しいニュースを1本書きあげることができ、その記事はすでに有名ウェブサイトなどに掲載されているそうだ。
すべての職がロボットに奪われる未来。どうやら映画の中だけの出来事ではなさそうだ。