「難民調査官」下村敦史氏
日本で難民申請をしたクルド人が見せる怪しげな言動に不信感を抱いた東京入国管理局の若き女性担当官・如月玲奈に忍び寄る隠謀の影を追うポリティカル・サスペンス小説。
著者が挑んだ最新作の題材は“難民調査官”なる耳慣れない職業である。
「この名前を知ったとき、これだ! と思いました。実は難民問題には第59回乱歩賞で日系ブラジル人を題材に作品を書いたころから興味を持っていまして、本格的に“難民モノ”を書くなら難民調査官は外せないと思っていました。ただ執筆中は現実との兼ね合いが難しかったですね」
ちょうど半分ほど書き終えたころに欧州で怒涛のような難民問題が勃発した。
「びっくりしました。それまで難民問題は、日本でまず取り上げられることがなく、だからこそ書く意味があると思っていたのですが、あれだけ報道されると、逆に書く意味はあるのか、他の作家の方々に先を越されるのではないか、いろいろ不安になりました。でも開き直って、今の情勢も踏まえた作品にしようと思い至りました」