認知症の常識が変わる本特集
「治さなくてよい認知症」上田諭著
認知症を治したいと願うのは無理からぬこと。メディアも専門医も社会全体もそうあおるため、当事者の思いも募るばかりだ。しかし、現時点では認知症を治す薬はない。そのため、患者とその家族は「認知症を治そう」「元に戻そう」という思いは捨てるべきだと、高齢者専門外来の医師である著者は言う。
認知症になったら人生を諦めろ、ということではない。むしろ逆で、認知症と付き合いながら前向きに生きるための、発想の転換だ。長寿社会には認知症が付きもの。そのことを受け入れ、治すことではなく、長生きをしながら認知症と共存することに力を注ぐべきだと本書。
新しい出会いや体験を通じて生活に張り合いを持たせ、豊かな認知症ライフを送るための工夫も模索していく。(日本評論社 1600円+税)