改めて学び直すドラッカー本 お薦め4冊
「小説でわかる名著『経営者の条件』人生を変えるドラッカー」吉田麻子著
東芝など、かつて勝ち組といわれた日本企業が次々とつまずいているのはなぜか。それは事業の目標が「4半期の利益」という1点だけに集中してしまったからではないか。「経営の神様」と呼ばれた経営思想家ピーター・F・ドラッカーは、「事業の目的として利益だけを強調」する危うさを説いている。日本が経済大国になることや東西冷戦の終結をいち早く予言した氏の教えを今、あらためて学び直すためにお薦めの4冊を紹介する。
あまたあるドラッカーの著作の中でも、その神髄のひとつといわれる名著「経営者の条件」のエッセンスを小説仕立てで分かりやすく解説したドラッカー入門に最適の書だ。
研修会社で働く夏子は、同僚の面前で社長から厳しく叱られ、自信喪失に陥る。草創期から10年以上、常に社長の指示通り、期待通りの仕事をしてきたつもりだが、「少しは自分のアタマで考えて行動しろ」と言われ、立ち直れない。そんな中、バスの車内で勤務先の社長の愚痴をこぼす若者を諭す年配男性の言葉が夏子の耳に入ってくる。ドラッカーという人が「経営者の条件」という本の前書きで、「ほかの人間はマネジメントできないが、自分はマネジメントできる」と言っているそうだ。「何かを成し遂げたいなら、成果をあげたいなら、まず自分からだ」という男性の言葉に触発された夏子は、書店に直行する。
一方、ノルマの達成に苦しむ広告代理店の営業マン・柊介は、営業先のカフェのオーナー・徹にドラッカーの読書会に誘われ、学生時代の後輩・夏子も誘って参加することに。徹も脱サラしたものの、起業がうまくいかず悩んでいた。
読書会の講師で塾経営者の東堂によると、「経営者の条件」という書名の“経営者”という言葉にしり込みする人もいるが、原題は「仕事のできる人」というニュアンスで、仕事で成果をあげるために何をすればよいのか、必要な5つの能力について書かれているのがこの本だという。
その内容を読書会で学びながら、夏子、柊介、徹がそれぞれの仕事で成果をあげていく姿を描く。(ダイヤモンド社 1500円+税)
「ドラッカー教授『現代の経営』入門」グローバルタスクフォース著 山中英嗣監修
「経営者の条件」「創造する経営者」と並ぶ3部作のひとつ「現代の経営」を読みこなすためのテキスト。
マネジメントとは、部下の言動をチェックしたり、決められたことができているかどうかを管理することと思われがちだが、ドラッカーの語るマネジメントとは、それらを通して「何とか結果を出せるようにすること」だという。部下が決められたことをできなかった場合、どうしたら誤った行動を修正できるのか、できていない課題をどう解決していくのか。これらを主体的に考えて本質的な課題を解決していくことこそが、正しい意味での「マネジメント」だと説く。「世界最古かつ世界最小の経営のツボ集」である「現代の経営」でドラッカー経営学の真骨頂を学ぶ。(総合法令出版 1800円+税)
「日本に来たドラッカー」山下淳一郎著
ドラッカーは1959年夏、社団法人日本事務能率協会(当時)の招きによって初来日している。
その招聘の経緯や来日中の氏の素顔など当時のエピソードとともに、セミナーや講演の内容をまとめて解説したドラッカー本。
57年秋、同会によるドラッカーの招聘計画が動きだすが、1年半の交渉の末、氏から正式に断りの手紙が届く。それでも、諦めきれずに、要請を続けた同会の熱意で来日が実現する。
講演では、2000人の日本人経営者を前に、氏は明治維新や戦後の復興を成し遂げた日本の秘めた力を、最大限に生かし切るにはどうしたらよいのかを語ったという。
20日に及んだ滞在中に氏が日本に残した指針を紹介する。(同友館 1800円+税)
「完全図解 一冊で丸わかり ドラッカー・ポーター・コトラー入門」中野明著
「マネジメント論のドラッカー」「戦略論のマイケル・ポーター」「マーケティングのフィリップ・コトラー」といわれる3巨人。ビジネス理論の「常識」ともいわれる彼らの理論を解説したガイドテキスト。
ドラッカーは「組織の目的とは顧客の創造」であり、その機能は2つしかないと説く。それがマーケティングとイノベーションだ。マーケティングとイノベーションを車の両輪とするなら、ハンドリングするのがマネジメントとなるが、そのためには組織がいかなる態度で顧客を創造するのかがはっきりしなければならない。その方向性を指し示すのが戦略である。
組織という自動車を操るテクニックが総合的に学べるビジネスマンの強い味方。(朝日新聞出版 1400円+税)