「姥捨て山繁盛記」太田俊明著
初期の認知症と診断され、59歳で大手企業を早期退職した西澤亮輔は、山梨県穂津村の介護施設「シニアの郷・穂津」に入所する。周囲の景色は美しく散歩にはもってこいの場所だが、川から下はダムの水没予定地になっており、立ち入り禁止区域だという。娘の由香が言うには、50年前に持ちあがったダム建設計画の反対者たちが居残る“姥捨て村”があるらしいのだ。そして村には日本一のワイナリーがあるとも。
ある事件をきっかけに姥捨て村を訪れるようになった亮輔は、やがてワイナリーを営む枡山が語る、村への思いに共感。亮輔は村に移り住み、村営に乗り出すのだが……。
ダム建設を巡って分裂した村を舞台に、新しい人生を生きる意欲を取り戻した男を描いた、第8回日経小説大賞受賞作。(日本経済新聞出版社 1500円+税)