「夜の谷を行く」桐野夏生著

公開日: 更新日:

 主人公は、若き日に連合赤軍に加わり、逮捕された経歴を持つ西田啓子。群馬の山岳地帯で行われた「総括」という名の集団リンチから逃げ出したひとりだったが、その経歴のせいで家族や親戚から距離を置かれ、目立たないようにひっそりひとりで暮らすようになっていた。

 しかし、元メンバー・熊谷千代治からの突然の連絡や、最高幹部・永田洋子死刑囚死亡のニュースを契機に、忘れたかった過去が浮上。姪の結婚式や東日本大震災という未曽有の出来事、かつての結婚相手・久間伸郎との再会、取材を申し込んできたライター・古市洋造の登場などによって、啓子は過去と直面せざるを得なくなるのだが……。

 本書は、45年前にメンバー同士の凄惨なリンチで12人の死者を出し、世間を震撼させた「連合赤軍事件」を題材にした長編小説。リンチの現場に居合わせることになった主人公が封印してきた過去の真実が次第に明らかにされていく。思いがけない結末を迎える最終章まで、一気に読める。(文藝春秋 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭