ハイブリッドなサボテン 驚きの美しさ

公開日: 更新日:

「サボテン PETCHTAMSEEの写真図鑑」カイモック・チャウィーワナコン著

 地味な印象があるサボテンだが、本書を手にした人は、その色彩の豊かさと造形の面白さに驚かされることだろう。本書は、タイ人栽培家が、人工授粉による異種交配で作り出した斑入りのギムノカリキウムというサボテンを中心にした写真図鑑。表題の「PETCHTAMSEE」とは彼女が創立した栽培園の名だ。

 収録された斑入りのギムノカリキウムの個体の多くは、日本でも愛好される「緋牡丹錦」と呼ばれるものだが、ハイブリッドによって生み出されたそれは、ある個体は1カ所からモクモクと秩序なく湧き上がるように盛り上がり、またある個体は秩序良く並んだひだがひとつの大きな塊を作り出したり、そして夜空に浮かぶ花火のように放射状にいくつもの小さな塊で全体を構成するモノなど。形状もさまざまだが、赤やピンク、黄色に緑と、色彩のグラデーションもどれひとつとして同じものがない。さらにその一つ一つがそれぞれ美しくもたけだけしいとげを持ち、見ていて飽きることがない。

 著者のコレクションの始まりは、植木市で3人の娘におねだりされて、入門書と一緒に購入した3つのギムノカリキウムだったという。

 やがてその魅力に取りつかれた著者は、斑入りの交配種を作りたいという思いに導かれ、挿し木や接ぎ木などの方法を試した後、人工授粉で異種交配種を栽培する方法にたどり着き、より鮮やかで濃い色の多性雑種のサボテンを作り出せるようになったそうだ。

 一介の主婦だった女性が、二十数年をかけて作り上げた栽培園には、貴重なサボテンがあふれ、世界から愛好家が集まってくるという。

 愛好家はもちろん、まったくの素人にもサボテンの知られざる魅力を教えてくれるお薦め本。(グラフィック社 2000円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ吉井監督が佐々木朗希、ローテ再編構想を語る「今となっては彼に思うところはないけども…」

  2. 2

    20代女子の「ホテル暮らし」1年間の支出報告…賃貸の家賃と比較してどうなった?

  3. 3

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  4. 4

    「フジ日枝案件」と物議、小池都知事肝いりの巨大噴水が“汚水”散布危機…大腸菌数が基準の最大27倍!

  5. 5

    “ホテル暮らし歴半年”20代女子はどう断捨離した? 家財道具はスーツケース2個分

  1. 6

    「ホテルで1人暮らし」意外なルールとトラブル 部屋に彼氏が遊びに来てもOKなの?

  2. 7

    TKO木下隆行が性加害を正式謝罪も…“ペットボトルキャラで復活”を後押ししてきたテレビ局の異常

  3. 8

    「高額療養費」負担引き上げ、患者の“治療諦め”で医療費2270億円削減…厚労省のトンデモ試算にSNS大炎上

  4. 9

    フジテレビに「女優を預けられない」大手プロが出演拒否…中居正広の女性トラブルで“蜜月関係”終わりの動き

  5. 10

    松たか子と"18歳差共演"SixTONES松村北斗の評価爆騰がり 映画『ファーストキス 1ST KISS』興収14億円予想のヒット