戦中戦後の混乱期から抜け出し、後半には経済成長が始まった昭和30年代は、史上もっとも暮らしが充実した時代だったという。
それまでしつけの場の意味合いが高かった食事は、ちゃぶ台を囲んで家族揃って食べるのが当たり前になり、ハンバーグやシチューが献立にも並ぶようになる。また着物、モンペから洋服へと移り、女性の生理用品も登場した。
中でも特筆すべきは、ハイレベルな家庭看護だ。当時は入院施設が少なかったこともあり、家庭で注射器、浣腸器、吸引器などの完備はもちろん、赤痢やチフスも家庭で看護していた。
庶民の日常の暮らしの変化を貴重な資料とともに紹介する。
(朝日新聞出版 1700円+税)