「つばき」山本一力著
寛政元年5月、つばきは浅草で営んでいた一膳飯屋「だいこん」を深川に移す。土地の行事やしきたりを覚えたいつばきは、貸元の弐蔵に教えを請う。そんな時、店に大工の吉蔵と名乗る男が訪ねてくる。吉蔵は深川で名の通った廻漕(かいそう)問屋・木島屋の隠居所の普請を請け負っており、3日後に上棟式のための仕出し弁当を100個届けて欲しいという。注文をこなすため、つばきは魚市場の信次らの協力を得て、小鯛を仕入れる一方、奮発して杉の折り箱も調達する。そうして仕上げた弁当を約束の時刻に届けたが、普請場には上棟式だというのに招かれた客の姿はなく、つばきの胸はざわつく。
深川に馴染もうと奮闘するつばきの姿を描く下町細腕繁盛記。
(光文社 720円+税)