「夜空に泳ぐ チョコレートグラミー」町田そのこ著
同級生の近松晴子の祖母には、すごい噂があった。11年前、草刈り鎌を持って晴子の母を追い回し、家から追い出したというのだ。晴子は父と祖母の3人暮らしで、小学生の時から祖母は校門まで晴子を送り迎えしていた。晴子はつらいことがあるといつも祖母の胸で泣いていた。
そんな晴子が夏休みちょっと前に〈孵化〉した。田岡が晴子の祖母をモンスター扱いし、気持ち悪いから来るなって言えと迫ったとき、いつもは無反応だった晴子が殴りかかっていったのを見て、啓太は感動した。啓太が晴子の手首を掴んで止めた時、晴子は震えていた。だが、晴子の祖母は6月からは来ていなかったのだ。(表題作)
女による女のためのR―18文学賞大賞受賞作。
(新潮社 1500円+税)