「すべての見えない光」アンソニー・ドーア著、藤井光訳

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 第2次世界大戦末期。フランスのブルターニュ地方のエメラルド海岸にある古くからの城壁に囲まれたサン・マロの市街地は、徹底抗戦を訴えるドイツ軍を追い出すべく、連合軍による激しい砲撃が始まろうとしていた。

 そんな危険なサン・マロの市街地にたたずむ、「ただちに市街の外に退去せよ」というビラを読むこともできない16歳の盲目の少女マリー・ロールと、18歳のドイツ人2等兵の少年ヴェルナー・ペニヒ。ふたりはどんな経緯で戦火の最前線であるこの地にたどり着くことになったのか。物語はふたりの10年前にさかのぼり、それぞれのエピソードが交互に語られていく……。

 原書は、2015年にピュリツァー賞を受賞した米国の大ベストセラー。孤児院で育ち炭鉱で働くしかない運命にあらがって特別の教育を受けナチスに引き入れられた少年と、ナチスのフランス侵攻で住む場所を追われた少女の劇的な人生とふたりの一瞬の邂逅とを、美しくも詩的な描写で描いている。

(新潮社 2700円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

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