「べんけい飛脚」山本一力著
寛政2(1790)年師走、加賀藩から江戸と金沢を結ぶ飛脚御用を請け負う浅田屋の主・伊兵衛を、道具屋(書画骨董屋)の善吉が訪ねてきた。善吉は伊兵衛に、加賀藩5代藩主・前田綱紀の従者がしたためた書物「享保便覧」を見せる。1年前、浅田屋の飛脚が公儀の嫌がらせで窮地に陥った前田家を救った。
以来、伊兵衛は老中松平定信の恨みを買い、四六時中、監視されていた。
綱紀は外様大名でありながら、孫ほども年が違う将軍・吉宗に頼りにされており、その吉宗の孫が松平だった。
善吉は、66年前に亡くなった綱紀と吉宗のことを記したこの書物に、前田家と浅田屋の安泰の鍵があると話す。
加賀藩の命運を託された男たちの熱い心意気が感動を呼ぶ時代長編。
(新潮社 750円+税)