「ホテルよりも快適!一度は行きたい東京絶品旅館案内」東京旅館探偵団編
訪日観光客の急増とともに人気が高まっているのが、東京の旅館だ。リーズナブルな価格で、和のテイストを体感できると好評な一方、日本人利用者の減少に悩んでいた旅館も彼らに活路を見いだすことができ、まさにウィンウィンの関係が続いている。
東京にあまたある旅館の中からお勧めを紹介するグラフィックガイドブック。
訪日観光客の人気スポット浅草にある「助六の宿 貞千代」は、「浅草は、今も江戸」のキャッチフレーズのもと、館内のいたるところに江戸の火消し道具や骨董品、浮世絵が飾られ、江戸情緒に満ちている。昭和47年に宿を改装した際、独自色を出すために、芸事に精通していたご主人が宿で若手落語家を招いて寄席を開催。以来、宿泊にたいこ持ちや芸者、講談、長唄などの芸事体験を合わせたプランを提供している。
一方、今や東京の旅館の代名詞ともいわれているのが文京区本郷にある「鳳明館」だ。戦前は高級下宿、戦時中は軍需省の宿舎として使用されていた明治38年築の本館を、戦後に旅館に転業。需要の拡大で、昭和25年に台町別館、30年には森川別館を開業し、現在も3館体制で営業を続けている。
本館は有形文化財の指定も受け、他の2館もぜいを尽くした名建築で、見応えがある。 新たな参入組もいる。三ノ輪の「行燈旅館」は、「下町の雰囲気が残る中で外国人旅行者に宿泊を安く提供したい」と、自らも旅人であるオーナーが平成15年にオープンした和風デザイナーズ旅館。同館では、銭湯絵さながらの有田焼の壁画タイルアートに囲まれたジャグジーなどが人気だという。
こうしたブームの先駆けとなったのが、今や世界的旅行ガイドでも紹介される谷中の「旅館澤の屋」だ。昭和57年に経営が行き詰まり、外国人受け入れ宿に方向転換以降、現在まで89カ国から約17万人もの旅人を迎え入れてきたという。
下町のこの小さな旅館が提供するのは、特別なことは何一つないごく普通の日本的な生活様式。宿の周辺も観光客向けの店などないごく普通の街だ。でも、主人はそれが「宿の強み」だという。
「普通の街で、庶民の日常や文化を観察して、土地の人と触れ合うこと。それこそが旅の目玉になりえる」のだと。
その他、荻窪の「旅館西郊」や古民家をリノベーションした1日1組限定の一棟貸し、南品川の「Bamba Hotel」など19旅館を紹介。外国人視線で旅館に泊まってみれば、新たな東京の魅力に気づくことができるかも。(発行/スタンダーズ・プレス 1000円+税)