都内お薦め散歩コース25選
「東京さんぽ図鑑」スタジオワーク著
さまざまな顔を持つ東京のお薦め散歩コースを案内してくれるイラストガイドブック。
今も現役の古い建物や地形、そして町並みに刻まれた痕跡からその土地の歴史に思いを馳せながら、各町を歩く。
例えば「北千住」。日光街道最初の宿場町である千住の旧街道沿いの商店街には、江戸時代の地割りが残されている。JR北千住駅から宿場町通りを荒川に向かって歩き始めると、すぐに元治元(1864)年創業の石鍋商店が見えてくる。
江戸の税は、敷地面積ではなく、間口幅で課せられたため、間口が狭く奥行きが長い短冊形の地割りが特徴で、同店の間口も約三間(5・46メートル)と狭い。
しかし、各店が間口全体に商品を並べ競うため、通りには活気がもたらされたという。
表通りに対して15メートルおきに伸びる路地に入ると、さらに江戸時代からの町家のスタイルや庶民の暮らしぶりが見えてくる。短冊形の敷地にはかつて店、住居、庭に続いて土蔵が造られ、同地には今も50もの土蔵が健在だという。
土蔵の先の畑だった土地に、職人や近くの工場で働く人の長屋ができ、現在は住宅やアパートが並ぶ。
路地裏の長屋には内風呂がなかったため、界隈には5軒もの銭湯が健在で、そのひとつ「大黒湯」は、宮大工の手による宮造り型の威風堂々の建物。さらに江戸時代から続く接骨院名倉医院の武家屋敷建物などを巡る。
各建物の特徴や見どころを詳細なイラストで解説。もちろん老舗居酒屋などお楽しみ立ち寄りスポットも欠かさない。他にも、古書店として知られる神保町に形成されたチャイナタウンの痕跡をたどるコースなど、25コースを網羅。春もすぐそこ。暖かくなったら、本書を片手に散歩に出かけよう。(朝日新聞出版 1500円+税)