「済州島 四・三事件」文京洙
アジア有数のリゾートとして年間1000万人もの観光客が訪れる韓国の済州島。米軍政下の1948年4月3日未明、同島では半島の南北分断に反対する左翼勢力が武装蜂起。それを鎮圧しようとする軍・右翼勢力とぶつかり、3万人もの犠牲者が出た。韓国の歴代政権によって封印されてきたこの「四・三事件」を解説した歴史テキスト。
戦後の米ソによる分断占領に始まる事件の背景から、蜂起した武装隊と討伐隊の攻撃と報復の板挟みとなり、島民が双方から痛めつけられたという複雑な残虐行為の実態まで、事件の実相を詳述。さらに貧困と飢餓に苦しんだその後の島の歩みから、真相究明に至るまでの長い戦い、そして島の共同体が再生するまでの軌跡をつづる。
(岩波書店 1300円+税)