「織田家臣団の謎」菊地浩之著
どんな出自の者でも、才覚があれば出世が可能な実力主義というイメージが強い信長の率いる織田家臣団。しかし史料をあたると、出自不問とは言い切れないさまざまな処遇があった。著者は、信長がいかにして最強の家臣団を形成したのか、信長の父(信秀)の時代にまでさかのぼって、その過程を丹念に追いかけた。そこから見えてきた人材登用の戦略を、本書は解説している。
信長の家臣団の特徴のひとつに、今でいう中途入社組の家臣の多さがあった。しかしこれは実力主義というより、父親の代から仕えた家臣が少なかったために起きたことではないかと著者は説く。
それは、新卒採用ができなかった創業まもない企業で、中途入社組が創業メンバーのようになってしまうのと似ているというのだ。
父の代から上洛前、そして上洛後に有力武将をどのように構成していったかを追っていくと、信長の取った戦略が明智光秀の謀反の原因になったという、著者の論が興味深く見えてくる。
(KADOKAWA 1700円+税)