電気自動車の普及で日本の自動車産業がピンチに!?
昨年4月、アメリカの電気自動車(EV)ベンチャーであるテスラ社の株式時価総額が、ゼネラルモーターズを超えたという衝撃のニュースが伝えられた。風間智英著「EVシフト」(東洋経済新報社 1600円+税)では、急速に進む自動車の電動化と世界の動きを徹底リポートしている。
1997年、市販車として世界初となるハイブリッド車(HEV)、トヨタのプリウスが販売され、世界の電動車市場の形成が始まった。一方、欧州ではHEVにネガティブキャンペーンを展開しながら、ガソリン車よりも燃費のよいディーゼル車を押し出していたこともあり、電動車市場の立ち上がりは遅かった。
ところが、2015年に発覚したフォルクスワーゲンの“排ガス不正”を機にEVの導入が急激に拡大。2016年には、ドイツの連邦参議院で「2030年までに内燃機関を搭載する車の販売を禁止する」という政策方針まで通過し、フランスやイギリスでも同様の方針が発表されている。
さらに怖いのが、中国の動きだ。2017年、中国でも欧州同様の政策の検討が発表された。中国は自動車の世界最大市場であり、世界の自動車メーカーは中国政府の政策を無視できない。大気汚染の改善と自動車産業の振興を目的として、補助金をはじめとするEV普及政策も進んでいる。政府主導によるEVシフトが世界各国で活発化し、電動車市場における日本包囲網の形成が始まっていると本書。
部品点数の多い従来の自動車開発には「すり合わせ」が不可欠で、日本の競争力の源泉でもあった。しかし、エンジンがなくなるEVでは日本の強みが低下する恐れもある。今後の自動車産業の勢力図を知るための必読の書だ。