「あの夏、二人のルカ」誉田哲也著
沢口遥は、夫と別れ、名古屋から東京・谷中に戻ってきた。「谷中ぎんざ」を歩き、「夕焼けだんだん」を下りながら、14年前の自分を思い出している。女子高生だった遥は、ギターケースを提げていた。
場面は変わり、高2の久美子は、ギターを弾くクラスメートの翔子と実悠に声をかけ、ガールズバンドを結成する。ドラマーの久美子がリーダーとなり、父親が経営するレンタルミュージックスタジオの空き時間に、3人で練習を始めた。そこに、マネジャー役の瑠香が参加、さらに転校生のヨウがボーカルに加わって、キラキラ輝く季節が始まった。
ヨウは敵を威嚇するような目をして、怖いくらい本気で歌う。ヨウの歌は聴く者を揺さぶる。
「あんた、なかなかロックしてんじゃん」
久美子は仲間を引っ張って、夢に向かって走り出す。バンド名はルーカス。練習を重ねて腕を上げ、オリジナル曲を作り、プロデビューの話も持ち上がる。
別々に進行する遥と久美子の物語は、14年の歳月を超えて合流する。大人が嫌いで、自分も嫌いなヨウ。なぜか献身的にメンバーを応援する瑠香。多感な少女たちは音楽を通じて確かにつながっていた。でも、キラキラした夏は短かった……。
ギターテクニックや音楽用語が満載で、若き日にギターやバンドに熱中したおじさんたちも、胸キュン間違いなし。
(KADOKAWA 1500円+税)