「本音化するヨーロッパ」三好範英著
現在のヨーロッパは、難民危機やロシアの脅威などの外圧と、ユーロ危機やポピュリズムの台頭という内圧が相互に作用し、岐路に立たされている。そうした状況下でヨーロッパ各国のポピュリズム政党が躍進、中には政権に加わる国も出てきた。こうしたポピュリズムの動きを、扇動的な政治家に操られて起きている一過性の現象と見ると本質を見失うと著者は指摘する。外圧に直面した市井の人々がとっている防衛的な異議申し立てであり、いわば人間や国家の「本音化」ともいうべき現象だというのだ。
分断の傾向を強めれば、ヨーロッパこそ世界の地殻変動の震源地となる可能性もあると警告する著者が、エーゲ海の国境沿岸警備機関の活動やドイツの右派ポピュリズム政党など、ヨーロッパ各地を取材したルポルタージュ。
(幻冬舎 800円+税)