「ゴールデンカムイ」野田サトル著
第1回に取り上げるのは人気マンガ「ゴールデンカムイ」(1~15巻)。明治時代の北海道を舞台に、刑務所から脱走した囚人たちの体に彫られた入れ墨を巡って欲望爆発。どこかにある金塊を奪い合う宝探しアクションだ。しかし、読みどころはそれだけじゃない。物語の中で中心的な役割を果たす、アイヌの少女アシリパが作るジビエ料理の数々が、じつにうまそうなのである。
僕は狩猟免許を取得し、冬になると信州で鳥撃ちに励んでいる。自分で捕ったカモなどは解体して、肉はもちろん、骨からもスープを取って残さず使うようにしている。そうしろと言われたからではなく、生き物の命を奪ったからには、使えるものはすべて使いたくなるのだ。しかも、味が絶品。とくに鍋のあとで食べる雑炊のうま味ときたら……。
とまあ、ジビエには慣れている僕から見ても、このマンガの狩猟&食事シーンの描写はリアルさが半端ない。シカや熊の捕まえ方なんて序の口。松ボックリで作った罠にかかったリスの脳みそを食べるシーンが詳細に描かれたりもする。そんなものまでと驚くが、かわいい少女と脳みそ料理のギャップのせいか、アイヌの食文化が抵抗なく頭に入ってくる。
文字だけじゃわからない。写真じゃグロい。マンガだからこそ、超絶マニアック描写がエンタメになるのだと思う。
とくに序盤の5巻あたりまでは、狩猟とジビエの要素でぐいぐい読ませるパート。作者は現代の生活からは想像もできない闘いの舞台に読者を誘うため、“食べる”という行為を徹底的に利用しているともいえるだろう。僕はまんまとその企みにやられ、壮大な金塊争奪戦の渦に巻き込まれ、続刊の出る日を指折り数えて待っているところだ。
(集英社 540円+税)
ゴールデンカムイ 15巻