「超一流のサッポロ一番の作り方」マッキー牧元著
男の自炊、その基本は袋麺だ。こだわりのビーフストロガノフなどと小ざかしいことは言わず、チャッチャと作って黙々と食べるのが好きだ。本書はありふれた食事を楽しむための指南書。メインは前半のレシピと文章で、後半には牛丼からおでんまで、ありふれた外食メニューの食べ方が収録されている。
調理のルールは、10分以内で作る、わざわざ買い出しに行かない、醤油や味噌は入れないなど。手間を掛けずに最大の効果を狙う作戦である。
用いる“武具”の先頭打者は「サッポロ一番塩らーめん」。これをタンメン風、ホーチミン風、エスニックつけ麺風、香港下町風など9変化させている。ムム、味なことを。
焼きそば編の武具は「マルちゃん焼きそば」と「ペヤング」である。平凡な選択がいい。写真を見てるとチープ感があって、そこまでうまそうに思えないのがまたいい。日常食なんだから味はそこそこで満足しよう。欲張りすぎは品がないし、嘘はよくない。
作り方はほかにも、目玉焼きや卵かけご飯、バタートーストやナポリタンと続き、ついつい適当に作ってしまいがちな男料理を、一手間加えることで変身させていく。ポイントは、自分でも作れると確信できる点。レシピも付けられ実用性が高い。
僕が高く評価したいのは、本書が著者の経験を土台として作られていることだ。企画先行の本ではないのは文章を読めばわかる。マッキー牧元さんは、自分が好きで実践している食べ方だけを取り上げ、舌に馴染んだ味を教えてくれている。
創意工夫の始まりは小学2年。「チキンラーメン」にお湯をかけず食べてみたことだという。
<誰もが少しの疑いもなく、当たり前のようにしている食べ方に疑問を持った>
年季が入っているのである。読了後、さっそくタンメンを作った。僕が使う武具は「マルちゃん正麺旨塩味」である。(ぴあ 1200円+税)