「NORTH北へ」スコット・ジュレク著 栗木さつき訳
軽装で山々を走り抜けるトレイルランが、新しいスポーツとして若者の間でブームになっている。本書は、そのトレイルランの最高峰のひとつである北米アパラチアン・トレイル(AT)の総延長3500キロを46日8時間7分で走り切り、最速踏破記録(FKT)を打ち立てた著者の挑戦の過程をつづった回想録だ。「僕はつねに、トレイルとは地球の表面を走る血管だと考えてきた。大陸全体に広がる血管のように山脈や渓谷を縦横に走るトレイルでの体験を共有すれば、実に多くのことを学べる」と著者。
肉体的にも精神的にも極限状態にある中で、くしくも妻の誕生日に、妻と仲間が待つ最後のカタディン山の頂に到達したときのシーンは感動的だ。 (NHK出版 2000円+税)