「光まで5分」桜木紫乃著
主人公は、生まれ育った北海道から遠く離れた沖縄で、体を売って暮らしているツキヨ。観光マップには載っていない那覇の路地裏の店「竜宮城」で客をとって過ごしている。あるとき、歯の痛みに耐えられなくなったツキヨは客に教えられたブラックジャックというあだ名を持つ、もぐりの歯医者がいる場所を訪ねる。そこは、タトゥーをいれる人が通うタトゥーハウス「暗い日曜日」。彫師をしている万次郎と名乗る男が、ツキヨの歯の治療をしてくれた。万次郎と一緒に暮らしているヒロキとも気が合い、ツキヨは竜宮城を出て万次郎たちと一緒に暮らし始めるのだが……。
「雪虫」で第82回オール讀物新人賞、「ラブレス」で第19回島清恋愛文学賞、「ホテルローヤル」で第149回直木賞を受賞した著者による最新作。幼い頃、義理の父にされるがまま秘密の遊びをされ、母からは見て見ぬふりをされて育った女を主人公に、あたたかな場所を求めて流されるように生きてきた女性のあるがままの日常が描かれる。希望を持てないまま、死に場所を探すようにして生きるしかない人間の切なさが伝わってくる。
(光文社 1400円+税)