「安倍官邸VS.NHK」相澤冬樹著

公開日: 更新日:

 NHKといえば、かつてはジャーナリズム精神に基づく国民のための報道機関として一定の信頼を得ていたが、昨今信頼性に疑問を呈する声が大きい。官邸広報と化した報道姿勢に多くの人が気づき始めたからだ。

 いつから、こんなふうに変質してしまったのか。著者は、「森友事件」を当初から取材していたNHK大阪放送局の元記者。事件報道の背後でNHK内部では何が起きていたのか、さらには森友事件の真の問題点に迫っている。

 昭恵夫人の関与に明確に触れた原稿が、視聴者にわかりにくい形に変更されて、関西だけで報道されたこと、籠池氏へのインタビューでさえ全国放送にならなかった経緯、大騒動の末に放映された「クローズアップ現代+」ではインタビューが切れ切れに使われたり、お蔵入りしたものもあったこと、「ニュース7」で事件を放映した後に報道局長が「将来はないと思え」と言ったことなども赤裸々に描いている。記者職を外された著者は、取材を続けるために退職する道を選んだ。「森友事件は森友学園の事件ではない。国と大阪府の事件である」と言う著者の捨て身の姿勢が伝わってくる。

(文藝春秋 1500円)

【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…