「『安倍晋三』大研究」望月衣塑子著/KKベストセラーズ
「きちんとした回答をいただけていると思わないので、繰り返し聞いています」
官房長官の菅義偉にこう食い下がる望月の姿は、彼女をモデルとした映画「新聞記者」にも出てくる。スクラムを組んで力強く望月をバックアップしなければならないと思うが、この本は彼女がまとめた「安倍疑惑大辞典」である。
安倍は「拉致問題」でのしあがった。しかし生還した拉致被害者、蓮池薫の兄、透が指摘するように、安倍はこの問題で大ウソをついている。
「一時帰国」した拉致被害者に、安倍は「もう帰らなくていい」と主張したと強弁しているが、それは事実に反するのである。
蓮池透と辛淑玉の対話「拉致と日本人」(岩波書店)から、蓮池の発言を引く。
「安倍さんは地村保志さんたちに、『とにかく一度北朝鮮に戻って』、と頼みましたが、地村さんは拒否しています。地村さんは帰国後早い段階で翻意して、日本にとどまりたいという気持ちになっていました。帰ってきて、二日目ぐらいで『(北朝鮮に)戻るのは嫌だよ』と。その地村さんに対して安倍さんは、『帰れ』と促している」 これは、安倍シンパの札幌市議会議員、勝木勇人のブログでも証明された。2003年1月30日付のブログで、勝木は、当時官房副長官だった安倍の話を次のように紹介しているのである。
「安倍晋三先生のレクチャーは、(……)拉致被害者の話になり、地村さんたちには、最初、『とにかく一度北朝鮮に戻って、子供を連れて帰国すべきだ』という話をしたそうです。しかし、地村さんたちは、この申し入れを断固拒否したそうです。『一度、戻ったら、二度と帰国はできない』ということだったそうです」
このブログが問題になるや、すぐにネット上から削除されたとか。
私は最近、講演などで、「安倍が拉致問題を本当に重要だと思うなら、小泉純一郎のように平壌に乗り込め。そして、解決するまで帰って来るな」と強調している。聴衆からは拍手が来るが、実は「解決するまでは」を意図的に省略して「とにかく帰って来るな」と叫ぶこともある。
「まんが・安倍晋三物語」もなかなかの出来だが、内田樹へのインタビューとその答えが散漫なので残念ながら星は2つ半である。
★★半(選者・佐高信)