「鳥居大図鑑」藤本頼生編著
IT化甚だしい21世紀でも、日本人の暮らしに神社は欠かせない存在である。最近では、日本を体感できる場所として外国人にも人気が高い。
その神社の神域と、外界を隔てているのが入り口に立つ鳥居だ。鳥居は「神々の聖なる世界への入り口であり、神々に届けたい素朴な願いを持つ人々を聖域へと誘い入れる存在」だという。2本の縦柱と2本の横木からなる素朴な建造物ながら、実は多くのタイプがあることをご存じだろうか。
本書は全国各地の特徴的な鳥居を紹介しながら、その魅力を伝える異色図鑑。
鳥居は建築様式や発生の順序から、「笠木」と呼ばれる上の段の横木に反り増しがない「神明系鳥居」(伊勢神宮や靖国神社など)と、「貫」と呼ばれる下の段の横木とは別に笠木に接した「島木」と呼ばれる柱を渡した「明神系鳥居」(奈良の春日大社など)の2つの系統に分かれる。
そんな基礎知識を得たうえで、いよいよ神社巡り。北は「北海道神宮」から、南は沖縄の「波上宮」、そして海外の「出雲大社ハワイ分祠」まで56の神社の鳥居を解説。
伏見稲荷大社の千本鳥居や、広島の厳島神社などお馴染みの鳥居もあるが、中には3基の鳥居が上から見ると三角形になるよう組み合わされた東京・墨田区「三囲神社」の珍しい「三柱鳥居」や、1535年、武田信玄の父・信虎が厄よけ祈願のために奉納した山梨市の「大井俣窪八幡神社」の日本最古の木造の鳥居など。知られざる鳥居も多数取り上げる。
改めて見てみると、その不思議な形が放つ神聖で厳かな空気感に普段は意識しない日本人魂が刺激される。一読したら、もう神社の前を素通りすることなどできなくなるに違いない。
(グラフィック社 1800円+税)