「くさらないイケメン図鑑」吉田潮著
イケメンの定義は人さまざまで、最近では「イケメン~」と職業の前にまるで句のように添えて、もてはやしたりする。
辛口テレビ批評で知られるエッセイスト・イラストレーターの著者は、そんな風潮を「曖昧なままで持ち上げてしまえ、キャッチーな肩書でブームにしてしまえ」という日本独自の文化が、「イケメンという言葉を独り歩きさせ、無駄に蔓延させたのではないか」と斬る。
本書は、そんな著者自身の主観で「テレビドラマ史に残る・残したい」イケメン男優を一堂に集めたイラスト図鑑。
まずは「すっぽこ系」イケメン。「すっぽこ」とは、イケメン気取りで登場しても、最終的には三の線へと落とし込まれる「すっとこどっこい」や「へっぽこ」な役を演じることが多いイケメンのこと。
このジャンルに分類された近藤正臣は、今でこそインテリ好々爺役を演じるが、1969年のスポ根ドラマ「柔道一直線」で主人公のライバル役を演じた際、柔道に必要な足指の柔軟性をアピールするためにピアノに飛び乗って「ねこふんじゃった」を足指で弾いたと暴露。
渡部篤郎も、元妻・元カノに「踏み台」にされた感じがにじみ出る二枚目で、「優柔不断」を人で表したらこういう顔になるだろうとばっさり。
「顔圧系」イケメンに分類された山田孝之は、バランスのいいベビーフェースを覆いつくすほどのヒゲの濃さで、遠目で見るとマリモっぽい、と言いたい放題。一方で、舞台「フル・モンティ」での甘い歌声を、口パク歌下手アイドルには、その爪のあかを煎じずに、じかに飲ませたいと高く評価する。
ピックアップした265人を9ジャンルに分類。そのうち100人をイラストと解説で「斜め上から」愛でており、イケメンに密かに対抗心を燃やす世の男性諸氏も楽しめるはず。
(河出書房新社 1600円+税)