「民芸お菓子」福田里香著
1970年代に人気を誇った版画家の棟方志功は、日本で一番、食品の包装紙を描いた画家でもあるそうだ。今も各地の銘菓の包み紙などにその作品が使われている。
本書は、棟方のように「民芸運動」に携わった芸術家らがデザインを手掛けたり、プロデュース、命名したお菓子や、彼らが好んだ甘味、そして民芸に縁のある郷土菓子などを紹介するガイドブック。ちなみに民芸運動とは、柳宗悦が創始した「人々の暮らしの中で使われてきた手仕事の日用品に『用の美』を見いだす運動」のことだ。
戦争中、棟方は疎開した富山県福光町(現在の南砺市)で地元の素材にこだわるあられ・かきもちの店「柿山」の店主と知り合い、交流を続けた。同店は現在は屋号が変わってしまったが、棟方が天衣無縫の筆遣いで当時の店名を書いた包装紙を今も使用している。
また埼玉県行田市の名物「十万石まんじゅう」は、口にした棟方が「うまい(行田名物にしておくには)うますぎる」と大層気に入り、直ちに豪快な題字とまんじゅうをほお張るお姫さまを描いたとのエピソードが残っている。
その他にも、甘党だった柳宗悦が愛した文政元(1818)年創業という兵庫県明石市の藤江屋分大の「丁稚羊羹」や、陶芸家の河井寛次郎が日常のおやつとして口にした京都・東山の稲川菓舗「むぎ餅」などの銘菓が並ぶ。老舗ばかりではなく、栃木県益子町を陶芸の里に育て上げた濱田庄司の家で食べられていた自家製ヨーグルトの菌を譲り受けて起こした酵母で焼いた同町の泉’sBakeryの「おやつパン・粒あんパン」など88のお菓子とその包装紙の意匠などを紹介する。
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