「剣樹抄」冲方丁著
明暦の大火の復興が進む頃、若き徳川光圀は父に命じられて3000石の旗本・中山勘解由と、老中・阿部豊後守に会った。阿部は江戸の町割りを描いた地図を光圀に見せたが、地図にはあちこちに「十」という印が付けられていた。それはみな火事の火元だった。
阿部はこれを「正雪絵図」と呼び、由井正雪の江戸の焼き打ち法を表したものだと見た。光圀はこの地図を持っていた浪人・秋山官兵衛を追うことに。ところが、その秋山を、13、14歳の少年が棒1本で倒す場面に遭遇する。光圀はこの少年・了助を、捨て子を集めて作った隠密組織「拾人衆」に加えようと考えた。(「深川の鬼河童」)
4歳で孤児となった浪人の息子・了助が、幕府転覆をもくろむ者たちと戦う6編の時代小説。
(文藝春秋 1500円+税)