「ユー・アー・ヒア」ニコラス・クレイン著白川貴子訳
紀元前1900年ごろの中国には、最古の夏王朝を開いたという禹王がいた。実在したかどうかは不確かだが、禹王は「治水の神」としてあがめられている。中国の研究者チームは、地震による地滑りで天然のダムが決壊して大洪水になった時、禹王が治水工事を行ったと考え、その痕跡を調査した。ダムの決壊により11~16立方キロメートルの水が放出され、それは2000キロ以上先の下流まで流れ込むほどの凄まじい水流だった。
禹王の業績は、1000年後に編さんされた「禹貢」に記され、1865年にスコットランド出身のジェームズ・レッグによって翻訳された。
イギリスの紀行家で、王立地理協会の前会長が「地理学」のさまざまなトピックをつづる。
(早川書房 1700円+税)