「深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと」スズキナオ著
金がなく暇だけはある日々をどう楽しもうかと考えた大阪在住のフリーライターが、前から気になっていたけれど素通りしていたアレを確かめてみようというノリで体験した出来事を、つれづれなるままに書いたエッセー集。
表題の深夜高速バスについての段では、平日の夜に大阪を出発して翌朝東京に到着する高速バスの片道の最低価格が2000円であること、消灯時間になると私語もスマホも禁止されるので、ただ座って人生の思い出や宇宙の始まりについてまでひたすら考える時間が訪れること。また、隣の人との間のカーテンをいつ引くかという攻防戦、旅慣れた人から旅慣れてない人までの隣客あれこれ、安眠を大切にするバス会社からそうでもないバス会社など、100回ぐらい乗った体験があるからこその発見が紹介されていく。
ほかにも、銭湯の鏡に広告を出した話、唐揚げを何個食べたかレベルまで飲み代を割り勘にする飲み会、スーパーの半額セール肉を買い集めた焼き肉パーティーなど、意表をついた重箱の隅をつつくエッセー多数。本書を読めば、日常のあちこちに隠された面白みを再発見できそうだ。
(スタンド・ブックス 1720円+税)