「深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと」スズキナオ著

公開日: 更新日:

 金がなく暇だけはある日々をどう楽しもうかと考えた大阪在住のフリーライターが、前から気になっていたけれど素通りしていたアレを確かめてみようというノリで体験した出来事を、つれづれなるままに書いたエッセー集。

 表題の深夜高速バスについての段では、平日の夜に大阪を出発して翌朝東京に到着する高速バスの片道の最低価格が2000円であること、消灯時間になると私語もスマホも禁止されるので、ただ座って人生の思い出や宇宙の始まりについてまでひたすら考える時間が訪れること。また、隣の人との間のカーテンをいつ引くかという攻防戦、旅慣れた人から旅慣れてない人までの隣客あれこれ、安眠を大切にするバス会社からそうでもないバス会社など、100回ぐらい乗った体験があるからこその発見が紹介されていく。

 ほかにも、銭湯の鏡に広告を出した話、唐揚げを何個食べたかレベルまで飲み代を割り勘にする飲み会、スーパーの半額セール肉を買い集めた焼き肉パーティーなど、意表をついた重箱の隅をつつくエッセー多数。本書を読めば、日常のあちこちに隠された面白みを再発見できそうだ。

(スタンド・ブックス 1720円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    岡田阪神は「老将の大暴走」状態…選手フロントが困惑、“公開処刑”にコーチも委縮

  2. 2

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  3. 3

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  4. 4

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  5. 5

    中日・根尾昂に投打で「限界説」…一軍復帰登板の大炎上で突きつけられた厳しい現実

  1. 6

    安倍派裏金幹部6人「10.27総選挙」の明と暗…候補乱立の野党は“再選”を許してしまうのか

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    79年の紅白で「カサブランカ・ダンディ」を歌った数時間後、80年元旦に「TOKIO」を歌った

  4. 9

    阪神岡田監督は連覇達成でも「解任」だった…背景に《阪神電鉄への人事権「大政奉還」》

  5. 10

    《スチュワート・ジュニアの巻》時間と共に解きほぐれた米ドラフト1巡目のプライド