「あるいは修羅の十億年」古川日出男著
ステイルームに滞在する18歳のウラン(宇卵)をメキシコ人の美術家ガブリエルが訪ねてきた。海外の現代美術家と美術館による共同プロジェクトに、ウランが応募したシナリオが採用されたのだ。
プロジェクトのテーマは土地の「神話」で、ウランは東京の地下に眠る巨鯨について記した。ウランとガブリエルは東京を歩きながら、その神話を膨らませていく。その間、ウランは自分の左胸に小型原子炉があることをガブリエルに打ち明ける機会をうかがう。
一方、17歳のヤソウ(泰雄)は、震災で原子力発電所が「爆ぜ」て、孤絶した「島」から上京。カウボーイを名乗る養父からの指示で、東京シティ競馬の騎手となる。
東日本大震災から15年後の2026年の東京を舞台にした近未来小説。
(集英社 900円+税)