「翡翠城市」フォンダ・リー著 大谷真弓訳
カッコいい。そんな感想がぴったりの小説である。アクションがひたすらカッコいいのだ。ラストの凄絶なアクションまで、一気に突き抜けるから素晴らしい。
世界幻想文学大賞受賞、と帯にあり、さらにSF叢書の一冊なので、そういうのはどうも、と手控える方もいるかもしれないが、わかりやすく言うならば、船戸与一著「山猫の夏」+香港ギャング映画、なのだ。そう考えればいい。
対立する2つのグループが牛耳っている街が舞台。物語はそのひとつ、コール家を中心に進んでいくが、冷静な長男ラン、ホットな次男ヒロ、コール家から離れたい長女シェイ。この3人がそれぞれの立場で生きる様子が活写され、そこにさまざまな脇役たちが絡んできて、緊迫感ある物語が展開する。
SF的な設定にも少しだけ触れておけば、島の貴重な天然資源である翡翠のエネルギーを制御することで、人智を超えた能力を手に入れることができる、との設定がキモ。つまり翡翠を身につければ、ある種の超能力を手に入れられるのである。これは、その翡翠戦士たちの戦いの物語でもある。
秀逸な人物造形、テンポのいい展開と、たたみかけるアクション。そのすべてが素晴らしいが、圧巻はコール家から離れていた長女シェイが、あることをきっかけにふたたび翡翠を身につけるシーン。彼女が戦士に復活するシーンだが、ここで感動が込み上げてくる。
(早川書房 2500円+税)