「『人生百年』という不幸」里見清一著
臨床医がつづる週刊誌人気コラムの書籍化。
人は必ず老いて、寿命が尽きて死ぬ。しかし、そんな当たり前のことが認識されず、現代医療は基本的に「人間は死なない」ことを前提にしていると批判。がんなどの大きな基礎疾患や高齢による衰弱がベースにあっても、家族や医療者は患者が死ぬことはあってはならないと治療を優先する。
果たしてそれで患者は幸せなのかと疑問を投げかける。腎不全で亡くなった祖母も、透析とペースメーカーでもう少し延命できたかもしれないが、それはつまり「もう少し苦しめていた」ということでもあると振り返る。
これまで診てきた患者のエピソードを交えながら、現代医療が抱える問題点を歯に衣着せずに斬る。家族と自分の死について考えさせられる一書。
(新潮社 780円+税)