「汚れた桜」/毎日新聞「桜を見る会」取材班 毎日新聞出版
「桜を見る会」疑惑追及よりもっと大事な問題があるとか、いいかげんにしろと渋い顔をする人間には、創価学会名誉会長の池田大作を持ち上げる者が多い。なぜなら、「桜を見る会」の招待者には「首相枠」などの他に「公明党関係者」がいたからだ。
昨年の同会で、安倍晋三は「公明党の山口代表をはじめご来賓の皆さま、お忙しい中、こんなにたくさんの皆さま、足を運んでいただきました」と挨拶し、「今回の『桜を見る会』、64回目ですが、山口さんや皆さんと共に政権を奪還してから、7回目の『桜を見る会』となりました」と続けた。
公職選挙法違反や買収の疑いもあるこの問題で追及の手をゆるめないのは特に「毎日新聞」である。
チームを組んでまとめたこの49日間の記録で、疑惑が立体的となり、隠したいものは何かが鮮明になった。
私が特に注目したのは昨年11月20日に開かれた首相官邸記者クラブの「キャップ懇談会」である。完全オフレコで首相と会うこのキャップ懇に「毎日」のキャップは参加しなかった。同紙の政治部長、高塚保によれば、「内部で検討した結果」だという。「毎日」以外は参加したことについて、「ニューヨーク・タイムズ」の元東京支局長、マーティン・ファクラーは「信じられない。桜を見る会が批判されている最中に、内閣記者クラブのキャップが今夜、安倍総理と会食したそうである。メディアの信頼性を考えていないよね」とツイートしたとか。驚き、呆れてだろう。
これには2回戦があった。翌12月17日に今度は首相と番記者の懇談会が開かれた。これにも「毎日」は参加せず、今度は「東京新聞」も参加しなかった。
残念ながら、「朝日」は2度とも参加したのである。
それを知って私は、「朝日」の主筆を務め、政治家に転じて吉田(茂)内閣の副総理となった緒方竹虎が1955年にこう嘆いていたのを思い出した。
「筆者は今日でも、日本の大新聞が、満州事変直後からでも、筆を揃えて軍の無軌道を戒め、その横暴と戦っていたら、太平洋戦争はあるいは防ぎ得たのではないかと考える」
「言論の自由は各新聞の共同戦線なしに守れるものではない」と強調する緒方の忠告に従って、「朝日」の幹部は「毎日」や「東京」と共同して安倍の横暴と戦うべきではないか。 ★★★(選者・佐高信)