「ファミリーポートレイト」桜庭一樹著
コマコは、母親のマコがいつも何かから逃げているように感じていた。元女優のマコは、コマコの目から見ても美しい人だった。そのマコから「コマコ、逃げるわよ」と言われた時、口が利けない5歳のコマコは置いていかれないよう慌てて母親の手を取った。マコの足にはぺたっと赤いものが付いていた。
公営住宅を出て列車に乗った2人が行き着いたのは山奥の無人駅だった。通りすがりの青年の軽トラックに拾われた母娘は、村の診療所に住み着く。青年は村で唯一の若者で、役場勤務の要だった。コマコは要から字を教わり、本を読むことを覚える。そんな中、夜ごとに要が診療所を訪ねてくるようになり、やがてマコのお腹が膨らみ始める。
母と娘の逃避行から始まる長大な家族小説。
(集英社 990円+税)