「レフトハンド・ブラザーフッド」知念実希人著
高校生の風間岳士の左手は時々、事故で死んだ兄、海斗に乗っ取られて言うことを聞かなくなる。医師は岳士の症状を、脳障害や精神疾患による「エイリアンハンドシンドローム」と診断した。「君を悩ませているその偽者のお兄さんを、さっさと消し去ろう」と言われて、岳士は医師を殴ってしまった。そのため、精神科病院に入院させられそうになり、間一髪、自転車で逃げ出してきた。 岳士にだけ聞こえる海斗の声は「僕は……おまえの脳が作り出した幻だ」と言うが、岳士は信じない。その日は橋の下にテントを張って寝たが、悪夢で目覚めてみると、すこし離れた所に男の死体が転がっていた。
左手に宿る兄と逃避行を続ける少年を描くサスペンス。
(文藝春秋 1550円+税)