「動物たちのまーまー」一條次郎著
「わたし」がネコを飼い始めたと聞きつけ、ネコ好きのユージーンが来宅。だが、実は社長の海外出張の間、預かっているだけだ。手のひらに乗るハムスターほどの大きさのネコを見た彼の顔が輝く。テノリネコという珍種だという。ネコは預かってきたときよりも少し大きくなっていた。ユージーンによると、テノリネコは騒音にさらされると成長する性質で、際限なく大きくなるらしい。だから小さいほど貴重だという。
しかし、わたしが買い物に行っている間に、ユージーンのいびきとテレビの騒音でネコはちょっと大きくなってしまった。さらに近所の住人らが出す騒音でネコはどんどん大きくなってしまう(「テノリネコ」)。
不幸の数珠つなぎによって読者を混沌と不条理の世界に誘い込む短編集。
(新潮社 630円+税)