「江戸とアバター」池上英子、田中優子著
江戸社会と現代の仮想世界の意外な相似形を明らかにしながら、役割に固執し自己同一性の呪縛にとらわれた日本人に本来のしなやかな生き方への回帰を促す論考集。
米国在住の歴史社会学者の池上氏は、俳諧師・画家・思想家であり藩士でもあった渡辺崋山と、京都の絵師・横山崋山という東西の崋山の生き方を例に、江戸はユニバースを超えた「マルチ・バース」(多元的社会)であり、江戸人はアバター(キャラクター)を切り替えながら生きていたと説く。さらに落語を究極の「アバター芸」だという氏は、落語家の柳家花緑氏とも対談。
一方の田中氏は、江戸時代の人々がアバターを多用自在に展開することで江戸文化を形成していたことを明らかにしながら、江戸精神の神髄に迫る。
(朝日新聞出版 890円+税)