「江戸とアバター」池上英子、田中優子著

公開日: 更新日:

 江戸社会と現代の仮想世界の意外な相似形を明らかにしながら、役割に固執し自己同一性の呪縛にとらわれた日本人に本来のしなやかな生き方への回帰を促す論考集。

 米国在住の歴史社会学者の池上氏は、俳諧師・画家・思想家であり藩士でもあった渡辺崋山と、京都の絵師・横山崋山という東西の崋山の生き方を例に、江戸はユニバースを超えた「マルチ・バース」(多元的社会)であり、江戸人はアバター(キャラクター)を切り替えながら生きていたと説く。さらに落語を究極の「アバター芸」だという氏は、落語家の柳家花緑氏とも対談。

 一方の田中氏は、江戸時代の人々がアバターを多用自在に展開することで江戸文化を形成していたことを明らかにしながら、江戸精神の神髄に迫る。

(朝日新聞出版 890円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…