「男色大鑑」井原西鶴著 富士正晴訳
江戸時代の男色を題材にした浮世草子の現代訳。近世以前の日本では、男同士の恋は普通に行われていた。西鶴は「男色ほど美しいもてあそびはない」と記し、「大体女の心は例えていえば、花は咲きながら藤づるのねじれているみたいなものだ。若衆は針がありながら、初梅同然で、何ともいえぬいい匂いが深い。この点で、分別すれば、女を捨てて男に傾くべきである」と勧める。
若衆とは元服前の少年のことで、当時の男色カップルは、基本的に若衆と念者(元服後の成人男性)の関係で成立する。つまり美少年とおじさんの組み合わせが王道であった。その念者と若衆の他、若衆同士のカップルや、容色の衰えた歌舞伎若衆の悲劇、珍しく添い遂げたカップルなど、さまざまな男たちの恋物語を描く。
(KADOKAWA 960円+税)