「黙(しじま)」辻堂魁著
小伝馬町の牢屋敷の首打役の「手代わり」を務める別所龍玄の家を、夜明け前に平井喜八という武士が訪れた。家を存続させるため、よんどころない事情で切腹しなくてはならなくなったため、介錯を頼みたいという。
平井の総領息子だった伝七郎は、昨年暮れに奥山春阿弥の娘、満代を妊娠させたとされ、詰め腹を切って死んだ。平井が訪れた日に伝七郎の法要を行い、その後、厄介な用を片付けて切腹したいというのだ。
実は、満代の相手は市村座の女形、古中新之丞だった。平井は新之丞を問い詰めて白状させ、刀で切りつけて下帯一つの姿にしてさらし者にした。そして法要を行った後、奥山の屋敷に向かう。
凄腕の介錯人を描く時代小説。
(光文社 1700円+税)