「ペンギンのABC」ペンギン基金著
著者として名前が記された「ペンギン基金」とは、南極観測隊員などを歴任した故青柳昌宏氏によって、国内外のペンギンを保護する団体への寄付と、ペンギン研究者への援助を目的として設立されたNGO団体。本書は、団体設立20周年を記念して出版されたペンギンブックの復刻だ。
Suicaのペンギンのイラストで知られるイラストレーターの坂崎千春さんをはじめ、世界中を飛び回り野生のペンギンとの出合いを重ねているペンギン写真家の鎌倉文也・志保子の両氏、そしてペンギン研究者の宮崎正峰氏ら。基金に名を連ねるさまざまなジャンルのペンギン愛好家のコラボレーションによって生まれた本書は、事典仕立てでアルファベット順にペンギンの知られざる生態や面白エピソードを愛らしいイラストや写真と共に紹介する。
Aの項はもちろん「アデリーペンギン」。青柳氏が「ペンギンのなかのペンギン」と位置づけたアデリーペンギンの名前は、フランスの極地探検家が奥さんの名前をつけたのがその由来だという。
続くBの項では、南極のニュージーランド・スコット基地前にあるエンペラーペンギンの描かれている「バス停」、そしてCの「クッキング」では、イギリス領フォークランド諸島の伝統料理を紹介する本に載っていたというペンギンの卵を使った料理のレシピなど、意表を突く話題が満載。
中にはペンギンの「離婚率」をテーマにした項目まである。何でも種によって別れやすいものとそうでないものがあるようで、約90%が年間を通じてつがいを維持するジェンツーペンギンに対し、リトルペンギンの離婚率は、ペンギン界では高率の約18%にのぼるそうだ。
見て、読んで楽しいペンギンのA―Z、プレゼントしても喜ばれそうだ。
(河出書房新社 1600円+税)