「私的読食録」堀江敏幸、角田光代著
名作に登場する「食」を語るリレーエッセー。
向田邦子が「父の詫び状」で「カレーライス」と「ライスカレー」の違いについて述べていることを取り上げた角田氏は、ぜいたくな料理もたくさん食べたであろうこの作家が、みりん干しやさつま揚げなどのごく普通の料理を徹底して書いたことに驚嘆。彼女が書いたからこそ、普通の日の普通のごはんは、ちょっとすてきなものになったと。
一方の堀江氏は、ローレンス・ブロックの小説「殺し屋」に出てくる殺し屋ケラーが空腹を満たすためだけにとるピザやドーナツなどのありふれた食事シーンに、食べるという行為の残酷さと悲しさを見る。
ほか、開高健の「最後の晩餐」や内田百閒「御馳走帖」など100作品。「読むことでしか食べられない」至高の食体験。
(新潮社 630円+税)