「マスクは踊る」東海林さだお著

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 東海林はマスクが嫌いだったが、今回初めてつけてみて、世捨て人の心境になった。最近のマスクは大きくなっているので、見えている目だけでその人の内実を判断しなければならない。

 俳優は表情を商売にしているので、全神経を顔に集中させる。演技に用いられるのは、目の周辺の筋肉と口の周りの筋肉だ。シナリオに「悲しみをこらえたつくり笑い」とあり、そのあとに「つくり笑いを恥じてはにかむ」と書いてある。顔面の筋肉群で「はにかむ」を担当する部署はあるのか。コロナの時代がドラマ化されたとき、俳優はマスクをしたまま「はにかむ」をどう表現するのか。(「マスクと人間」)

 軽妙なエッセーと、おなじみ「タンマ君」傑作選を収録。

(文藝春秋 1400円+税)

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