「兵諫(へいかん)」浅田次郎著
1936年初秋、ニューヨーク・タイムズ紙で中国語通訳兼翻訳者として働いていたジェームス・リー・ターナーは、中国情勢を取材する任を受けて上海を訪れた。そこで出会ったのは、朝日新聞特派員・北村修治と、表向きは大倉商事上海支店の社員で実は日本軍の特務機関員である志津邦陽。北村は抗日運動が盛んな南京で取材するのが困難になり上海入りしたばかりだとジェームスに言い、情報交換しようと持ち掛けた。
西安の町が封鎖され、鉄道も交通も通信も途絶えた中、互いに連携して取材をしようと試みたものの、どちらもなかなか正確な情報が掴めない。
そんな中、張学良が蒋介石の身柄を拘束したというクーデターの知らせが届く。蒋介石の安否は依然不明。張学良はクーデターを起こしたのではなく、蒋介石に方針の転換を迫るべく兵を挙げて主の過ちをいさめる「兵諫」を行ったのではないかと志津は主張するのだが……。
本書は、大人気の「蒼穹の昴」シリーズ第6部。日中戦争の前年度に起こった二・二六事件と西安事件の背景やその意図をたどりながら、2つの事件の接点を探っていく。
(講談社 1760円)