「邪教の子」澤村伊智著
少女・慧斗が住む光明が丘ニュータウンに、車椅子に乗った少女の一家が引っ越してきた。しかし、少女・茜はなかなか学校に来ない。心配した慧斗が家を訪ねると、母親はコスモフィールドという新興宗教にハマっており、茜は部屋に閉じ込められ、また虐待も受けているようだった。
見て見ぬふりをする大人たちをヨソに慧斗は茜を助けたいと、同級生の朋美、祐仁と共に救出作戦を練る。大人たちの会話から知った「脱会屋のみずはし」を探し出して協力を仰ぐと、近く、コスモフィールドのセミナーが開催されることが分かった。セミナー当日、隙を見て茜を連れ出すことに成功した慧斗たちだが、追ってきた教祖と信者たちに取り囲まれてしまう。しかし、そのとき奇跡が……。
と、この少女・茜の奪還成功で物語は終わりかと思いきや、これはまだ序章で実は慧斗の回想録。
数年後、回想録を手にしたテレビディレクターの矢口が、今度は慧斗が会長を務める「大地の民」を探っていく――。
慧斗と同級生・祐仁との関係、矢口の失踪した母親など、やがて明かされる真実に驚愕。教団世界の閉塞感がじわじわと迫るサスペンスだ。
(文藝春秋 1870円)