「出る杭の世直し白書」鳩山由紀夫、孫崎享、前川喜平、植草一秀著/ビジネス社
本書は、鳩山友紀夫、孫崎享、前川喜平、植草一秀の対談をまとめたものだ。私は、4人とも直接、話をしたことがあるのだが、とても優秀で切れ味鋭い論客だ。ところが、彼らはあまりテレビ番組に出てこない。その理由は、彼らが政権に忖度せず、利権に斬り込んでいくからだ。
本書では、その特長が、存分に発揮されている。歯に衣着せぬ自由な物言いで、感染症対策、外交、脱原発、経済政策、教育など、幅広い分野を語りつくす。普段から中途半端な奇麗ごとばかり聞かされている私には、彼らの議論は、胸のすく思いがする。
例えば、政府の感染症対策は、後手後手、小出し、右往左往だと批判する。もちろん対案もきちんと示している。①徹底的な検査、②陽性者の行動抑止、③情報開示をしたうえで、④生活保障と⑤病床確保をする。このやり方は世界の常識だ。
ところが日本政府はいまだに大規模検査やロックダウンを拒否しつづけている。なぜそんなことをしたのか、本書ははっきりと利権だということを示している。
また、コロナ対策で73兆円もの補正予算を組んだにもかかわらず、その多くが利権を持つ人を潤わすことに使われた。予算をすべて1人10万円の給付金に回せば、5回実施できて、8兆円のお釣りがくる。それと引き換えに巣ごもりをしてもらえば、コロナの被害はずっと小さかったはずだが、そうした対策は取られない。給付金は、利権になりにくいからだ。
脱原発が進まない理由も、原子力ムラの利権を守るためだ。鳩山政権のときに電源の50%とする方針を示したことについて、本書で鳩山氏は「完全に誤った」と反省し、脱原発と同時に脱炭素を実現するための方策を具体的に提言している。
著者の4人に共通することは、時代の変化に合わせて主張を柔軟に変えることができることだ。前例踏襲を金科玉条として、一度走り出したら、間違いが明らかになっても、猪突猛進の官僚や政治家とは、まったく異なるのだ。
いずれにせよ、彼らの本音トークをたっぷり聞けるのは、書籍のなかだけだ。ぜひ多くの人に日本の真実を知ってほしい。 ★★★(選者・森永卓郎)