「大下流国家『オワコン日本』の現在地」三浦展著/光文社新書/2021年
資本主義社会における国力を測る上で最も重要なのは経済力だ。少子化が日本経済停滞の原因であるという見方は正しくない。韓国は日本以上の少子化社会であるが、経済は着実に成長している。既に購買力平価に換算した国民1人当たりのGDPは、韓国の方が日本よりも高い。平たい言葉で言うと、平均して見た場合、日本人よりも韓国人の生活水準の方が高いのである。
韓国は日本よりはるかに新自由主義的な競争社会で、社会的歪みも多い。しかし、経済競争で日本が韓国に負けているという現状は冷静に認めなくてはならない。日本の経済的停滞が今後も続くならば20年後に国民1人当たりのGDPで日本はベトナムに抜かれるのではないかと筆者は不安を覚えている。早急に対策が必要だ。
三浦展氏は、日本の弱体化をわかりやすく説明している。日本が危機から脱するためには、世代交代が必要であると三浦氏は強調する。
<私は、75歳以上は会社でも商店街でも政治でもすべて引退、発言も禁止にしたほうが日本のためだと思っている。75歳以上でも良い意見はあるだろうが、同じような良い意見は75歳未満でも出るはずだ。75歳以上に対して「わきまえ」て出なかった意見や75歳以上では出ない新しい発想を生み出すには、75歳以上は絶対に黙ったほうがよい。いや、60歳以上でも黙ったほうがよいと思うので、私も最近は少し黙っているくらいである。若い人が自由に行動する姿を見ているほうが楽しいからである。ベテランは彼らから相談を受けたら話に乗ってやるくらいで十分である。/すでに団塊ジュニア世代ですら50代になり始めたのだ。いい加減、50代以下にバトンを渡さないと本当に日本は危ないと思う。団塊ジュニアが65歳以上になりきる2040年までに日本・地方を変えないといけない>
評者は61歳であるが、三浦氏の主張に共感を覚える。日本は依然として儒教文明の影響下にある。年齢の高い人を敬わなくてはいけないという刷り込みがなされている社会において、年長者が自発的に席を譲らなくては若い世代が育たない。この現実を冷静に認識すべきと思う。 ★★★(選者・佐藤優)
(2021年10月29日脱稿)