「天誅の剣」八木荘司著
長州藩の山尾庸三と伊藤俊輔(後の博文)は、攘夷決行のため結成された血盟団御楯組に参加。士分すら持たない山尾や伊藤は、高い家格の高杉晋作らが自分を同志として扱ってくれることが何よりもうれしかった。
2人はある夜、共謀して国学者の塙次郎に天誅を下す。塙が今上天皇を廃帝したい幕府に命じられ前例となる故事を調べていると聞いたからだ。しかし、山尾は塙殺害を知った同郷の先輩で蘭学者の村田蔵六に激しく叱責される。村田によると幕府が塙に命じたのは廃帝のことではなく異人待遇の例式で、山尾らの見当違いだという。翌年、山尾と伊藤は村田の計らいで英国に密航する。
伊藤がハルビン駅頭で凶弾に倒れるまでの激動の時代を「天誅」をテーマに描く時代小説。
(新潮社 693円)